【ベイルート発】2024年10月1日未明、イスラエル軍はレバノン南部国境地域に対し、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの拠点を狙った限定的な地上作戦を開始したと発表した。この作戦は、イスラエル北部の地域社会に対する「差し迫った脅威」として認識されているヒズボラの活動に対する防衛的措置であるとされている。イスラエル軍の声明によれば、攻撃目標は国境に近い村落に存在し、正確な情報に基づく「限定的で局所的かつ標的を絞った地上攻撃」が行われているという。
空軍と砲兵部隊の支援下で地上部隊が作戦実施
イスラエル軍は空軍と国防軍砲兵部隊の支援を受けながら、レバノン南部の村々に進攻し、ヒズボラの拠点を攻撃している。現地住民によると、レバノン国境の町アイタ・アル・シャアブでは激しい砲撃音や、ヘリコプター、無人機(ドローン)の音が夜通し続いたという。
今回の攻撃は、イスラエル防衛相ヨアブ・ガラントが9月30日に発表した「ヒズボラとの戦闘の次の段階が間もなく始まる」との予告に続くものであり、地上侵攻の可能性を示唆したその発言は現実のものとなった。
ファタハ系指導者を標的にした攻撃
パレスチナ治安当局者によると、イスラエル軍の攻撃はパレスチナ自治政府の主流派ファタハ系であり、レバノンを拠点とするアル・アクサ殉教者旅団の幹部であるムニール・マクダ氏を標的として実施された。攻撃はレバノン南部のシドン近郊に位置する同国最大のパレスチナ難民キャンプ「アイン・ヒルワ」にも及んだとされ、そこでの建物が被害を受けたと報告されている。
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ベイルート南郊も標的に
一方で、レバノン治安筋によれば、夜間には首都ベイルート南部の郊外にもイスラエル軍による攻撃が確認された。イスラエル軍はベイルートの南に位置する建物がヒズボラの施設であるとして、周辺住民に退避を呼びかけていた。ロイター通信の記者が現地で確認したところ、退避警告が出されてから約1時間後、爆発音が相次ぎ、閃光が見えたという。
レバノン南部での被害状況
レバノン保健省は10月1日未明、過去24時間以内に行われたイスラエルの攻撃によって、南部地域やベカー高原、そして首都ベイルートにおいて少なくとも95人が死亡し、172人が負傷したと報告した。この攻撃は、イスラエルがヒズボラに対する軍事作戦を強化している中で発生したものである。
ヒズボラへの攻撃強化とその影響
イスラエルはこの2週間、親イランのシーア派組織ヒズボラに対する攻撃を強化しており、9月28日の空爆によってヒズボラの最高指導者であるナスララ師が死亡したと報じられている。この死亡事件は、ヒズボラにとって大きな打撃となり、組織の将来的な展望に対する懸念が高まっている。
しかし、ナスララ師の後任であるナイム・カセム氏は9月30日に初の公の場での演説を行い、イスラエルが地上侵攻を開始した場合、ヒズボラは即座に対抗する準備ができていると警告した。さらに、ヒズボラはイスラエル領内150キロの範囲にロケット弾攻撃を続けており、今後の展開に注目が集まっている。
レバノン軍の動向と国際的な反応
レバノン治安筋によると、レバノン軍は9月30日、南部国境沿いから5キロ後退する決定を下した。この動きは、イスラエルとの緊張が一層高まる中、レバノン側の慎重な対応を示している。
また、アメリカのホワイトハウスと国務省は、イスラエルの地上作戦に対するコメント要請には応じていない。しかし、バイデン米大統領は9月30日、ヒズボラに対するイスラエルの軍事作戦について「彼らが停止すれば私は満足だ」と述べ、自制を促す姿勢を示した。バイデン大統領はまた、「今すぐ停戦すべきだ」との考えも改めて表明した。
シリアへの空爆も実施
イスラエル軍はレバノンだけでなく、隣国シリアへの攻撃も展開しており、10月1日にはシリアの首都ダマスカスに対して空爆を行った。シリアの国営メディアによれば、この攻撃により民間人3人が死亡し、9人が負傷したと報じられている。
このように、イスラエルとヒズボラ、さらにはレバノンおよびシリアを巻き込んだ戦闘は緊張が高まる一方であり、今後の中東地域の情勢に対して国際社会の関心がますます高まっている。