青森県庁で10日、電気事業連合会の副会長である佐々木俊治氏が青森県知事の三村曽一郎氏に対し、高レベル放射性廃棄物の受け入れを要請した。しかし、三村知事は「検討すらできない。我々は拒否する」と強く反対の意向を示し、受け入れ要請を一蹴した。
今回の要請は、使用済み核燃料の再処理によって海外から返還される放射性廃棄物に関連している。日本国内の10大電力会社で構成される電気事業連合会は、低レベル放射性廃棄物の一部を少量の高レベル放射性廃棄物(固化ガラス)に交換し、それを青森県内の施設に運び込む計画を提案した。
日本政府は「核燃料サイクル」を推進しており、使用済み核燃料を再処理してウランやプルトニウムを抽出し、燃料として再利用することを計画している。しかし、青森県六ヶ所村にある再処理工場の完成はこれまでに27回延期されており、完成の目処が立っていない。このため、一部の再処理業務はイギリスやフランスに委託されており、その過程で発生した低レベル放射性廃棄物を青森県に返還することが、2010年に青森県知事および六ヶ所村長の同意を得て決定されていた。
しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて新たに導入された規制基準への対応が遅れ、再処理施設の完成目標は2026年度にまでずれ込み、当初の2021年度までに返還を完了させる予定だった計画は実現困難となっている。
今回の電気事業連合会による提案は、低レベル放射性廃棄物と交換して高レベル放射性廃棄物を青森県に受け入れてもらうことで、処理の遅れを解消する狙いがあった。しかし、三村知事はこれに対し即座に反対を表明し、「高レベル放射性廃棄物を受け入れる余地はない」と強く述べた。
青森県はすでに国内で唯一の中間貯蔵施設を持ち、全国から使用済み核燃料を受け入れている。そのため、県民の間ではさらなる負担に対する懸念が強まっており、知事の拒否はこうした地域の声を反映したものである。青森県は長年にわたり、原子力政策の一環として重要な役割を果たしてきたが、今回の事案に関してはさらなる負担を背負うことに対して強い拒否感を示している。
六ヶ所村の再処理施設は、日本の核燃料サイクル政策の中心的な役割を果たすべき施設であるが、その度重なる完成延期が大きな課題となっている。施設の建設は1993年に着工され、当初は1997年の完成を目指していたが、技術的な問題や規制の強化に伴い、計画が大幅に遅延している。
現在、2026年度に向けて再処理施設の完成が見込まれているが、それまでに発生する使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理方法については、まだ多くの課題が残されている。今回の電力会社連合会の提案は、その一環として打開策を模索する動きであったが、県の強い反対により実現は困難となった。
青森県は原子力政策に対して慎重な立場を維持しており、地域の安全や県民の理解を得ることが最優先されている。